2022特別対談!今、必要とされる「自動車業界のDX」の考え方 | 株式会社ZEALS

2022特別対談!今、必要とされる「自動車業界のDX」の考え方

Written by zeals recruit | 2022/01/01

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2020年に引き続き、2021年もわたしたちの暮らしやビジネス環境が大きく変化した年でした。そんな中、長い時間をかけても解決できなかったデジタル変革や働き方の多様化を急ピッチで進めるチャンスも到来しています。特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉は単なるスローガンではなく、企業経営における重要なキーワード・コンセプトになりつつあります。
今回は、33年間自動車メーカーの第一線で活躍してきた林(自動車事業部戦略推進室長)と、インターネット黎明期よりデジタルビジネスを推進してきた執行役員兼自動車事業部統括責任者の渡邊が、「今必要とされる『自動車業界のDX』の考え方」について対談しました。

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進における「難解さ」の罠

渡邊:昨今「DX(デジタルトランスフォーメーション)」に関する書籍は多数出版され、このキーワードを冠したカンファレンスやセミナーがそこかしこで行われています。
COVID-19の到来以降、こうした変革への必要性が急速に高まったことが大きな要因の一つだと思いますが、そうした書籍やセッションの中身を見てみると違和感を感じることがあります。
それは実行力。
「本質的なデジタルトランスフォーメーションはこうでなければいけない」「拙速なデジタルトランスフォーメーションはするべきでない」など、一見正しそうに見える(そしてとてもお金が掛かりそうな)論調ばかりが目立っており、「じゃあ最初にどうすればいいの?」という現場の皆さんの切実な問いに応えてくれるものがなかなか無いように感じます。

林:そうですよね。自動車業界に限った話ではなくて、一般的なDX論はかなり敷居が高いというか、極端に難しいものであると捉えられがちな側面があるのかもしれません。

渡邊:まさにその通りだと思っています。デジタル産業に長く関わって来ましたが、デジタルビジネスの本質であり特徴は、永遠のベータ版、すなわち「未完成でリリースして改善し続ける」ことができること、「早く参入すれば参入するほど有利である」(初期参入者メリット=ファーストムーバーズアドバンテージ)ことといえます。
難しく考えすぎて動けなくなるよりも、まずは動いてみて、DX以前のデジタル化でもいいから試してみる。肌で感じてみる。その経験を得た上で、より大上段のデジタル化戦略=DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていく。そういう「インターネット的」な思考がとても重要だと思うんです。
だからこそ我々ジールスは、DXというものをより身近で、親しみやすいものとしてお客様にはご案内しています。

林:ああ、確かに自動車業界では、DXは慎重に進めるべきものとして捉えられているかもしれません。僕自身もメーカー本社側にいて、顧客体験の全体をデジタル化することがDXだと認識していたため、とても慎重なスタンスをとっていました。

DXは人とデジタルの対立構造ではなく、共存関係で捉えるべきである

林:一方で、デジタル化とウェットな顧客とのつながりを共存するにはどうしたらいいのだろうか、ということも大きなテーマでした。
現場の声を聞きに行くと、DXやデジタル化に対する不安の声を耳にすることもありますね。業務、とくに接客分野をデジタル化することで、お客様は接客される際に人肌を感じられなくなるのではないか、とお考えになる方もいらっしゃいます。
デジタル=冷たい、冷徹な何かである、という印象は未だに販売店の現場などでは強いのではないでしょうか。

渡邊:そうですよね。AI技術が登場した時も同じような話がありましたが、そうしたある種のデジタル技術への嫌悪感みたいなものを増幅させてしまっているのも、この難解さにあるのかもしれません。新しく難解なため、自分たちとは関係のない冷徹なものとして捉えてしまう。人 VS デジタルの構図で捉えてしまっては、推進されるものもされなくなってしまうし、それはあまりにもったいないですよね。
対立軸ではなく、人 with デジタルという構図、すなわちどう共存するかが大切で、そのためにもやはり親しみやすい、始めやすいDXソリューションの必要性は高いと思っています。

林:デジタル化のためのデジタル化ではなく、DXの本来の目的は何であるのか。目的に立ち返ることが本当に重要だと思います。端的に言えば、自動車業界とその先にいるお客様が何に困っているかというところに寄り添ったデジタル化ですね。

渡邊:目的と本質的な課題に立ち返って、with デジタルの発想で取り組むことができれば、デジタルは人の仕事を奪うものではなく、むしろ強化してくれるものなんですよね。この思考を持てるようになるためにも、まずはとにかく始めて「デジタル村」に住むことが必要なんです。

林:デジタル化したからこそ分かる発見もありますよね。お客様へのおもてなし方は必ずしも直接的なヒューマンコミュニケーションだけではない。お客様が求める関わり方や、コミュニケーションの取り方も時代によって変わってきていることを肌で感じますね。

ジールスの考えるDX成功のための3つのポイント

林:今までの話を踏まえて、ジールスの考えるDXについてお話ししていきましょうか。

渡邊:繰り返しになりますが、正しくDXを推し進めるためにも、「とにかく始めてみる」ことが重要だと考えています。多くのDX指南書は「きちんと本質的な戦略構築から始めるべきだ」とするものが多いと思いますし、それはそれで正しいと思います。私も異論はない。しかしながら、「デジタルの土地勘」がなければ正しい戦略判断も叶いません。そうした視点から、逆説的ですが「とにかく始める」ことこそが重要だと思うのです。

林:「とにかく始める」、たしかに重要だとは思うんですが、最初の一歩を踏み出すことこそ難しいものはありません。始めるにあたってポイントなどはありますか?

渡邊:僕が前職時代からのデジタルビジネスの経験から導き出しているのは、次に上げる3つのポイントです。

まず「目的を明確化、言語化する」はわかりやすいですよね。これがないと始まらない。ただ当たり前過ぎて忘れられがちなのもこの「目的」です。先程林さんが言っていた「デジタル化のためのデジタル化」にならないためにも、目的の明確化、できれば言語化(だけ)はきちんとやりきって頂きたいな、と思っています。
2つ目のポイントは「効果がわかりやすいソリューションを選び、効果実感を組織に伝播させる」です。DXという一大プロジェクトは、なにかツールを入れて終了、という安易なものではありません。
例えるならマラソンであり、長い年月がかかるものです。単なるスローガンではなく、戦略や組織、働く従業員の行動・思考様式すら変えてしまうものでもあります。
だからこそ最初の一歩で必要なことは、「効果実感」なのです。それも、できる限りスピーディに効果実感を得る必要があると思っています。効果をすぐに感じることができればできるほど、従業員はデジタル化に対してポジティブに受け止め、正のスパイラルが回っていきます。このサイクルが回ると、従業員はこのDXプロジェクトを信じることができるようになるんですよね。
一方で、重厚長大なDX戦略を最初から採用してしまうと、初期効果実感を得られるタイミングが遅れてしまい、ネガティブなスパイラルが回ってしまう。こうなるとDXプロジェクトは頓挫してしまうリスクが高まってしまうのです。

林:自分の仕事を振り返ってみても、うまくいくプロジェクトは明確な目的があり、きちんとそのプロジェクトの意味をメンバーが信じられている状態だというのはとても納得ができます。

渡邊:3つ目は「経済合理性できちんと評価する」ということ。2つ目のポイントで従業員の感情を抑えつつ、きちんと論理的に「経済的に合理的かどうか」を評価することは非常に重要です。
特にデジタルの特徴の一つは係数化。きちんとKPIで測れなければ意味がありません。きちんとそのソリューションがどういった経済的な価値を持つのか、評価しやすいことからDXは始めるべきだと思います。
ジールスの接客DXソリューションは、これらのポイントを踏まえた上で構築・提供しています。

ジールスの接客DXソリューションの活用事例はこちらから

 

DX入門ツールとしてのLINEの適性と実行難易度

林:このようにポイントを整理していくと、我々がなぜLINE、しかもLINE入庫予約ソリューションからDXを推し進めているのか合点がいきますね。

渡邊:そうなんです。これらのポイントを抑えてくれているのが、LINE×入庫予約ソリューションなんですよね。
サービス開発にあたって、我々はまず販売店様などの課題を、アフターセールス領域の接客負荷(入庫誘致業務など)に特定し、そうした業務負荷を解消することで接客員、及びお客様の双方が「ラクになる」ことを目的としてサービス開発をスタートしました。電話やメールによるお客様とのコミュニケーションは、双方にとって本当にストレスになっているんですよね。

林:お客様に丁寧に対応したいと思いつつも、その対応顧客数が多すぎて・・・というのは販売店の永遠の課題の一つだと思います。この明確な課題に絞り込むことで、最初の一歩はより踏み出しやすくなると思いますね。

渡邊:加えて、先程のポイントの2つ目と3つ目、すなわち「効果実感」「経済合理性」を両立させるためにも、国民的インフラであるLINEを活用することは最適だと考えたんです。

林:確かにLINEは国民の約9割が使用しているプラットフォームですね。しかしながら自動車業界においてはそこまでLINEは活用されていない印象があります。
実際に、LINE社から提供されているデータを見ても、他業界と比べてLINEの利用率はアクティブ率、広告出稿額ともに低いということがわかっています。

渡邊:ここにコミュニケーションサービスの難しさがあるのだと思います。LINEはデイリーユースどころか、毎時間、毎分使うような、おそらくスマートフォンにインストールされているアプリの中でも最も使用頻度が高いアプリケーションです。
そうしたアプリケーションに単なる告知や宣伝をしていてもうまく活用される事はありません。他のメディアと同じように単なる告知媒体にしてはいけないのです。もっとユーザーの役に立つ、メリットのある機能の提供が必要不可欠だと思います。

DX成功に必要なのは「シンプルさ」とライフタイムバリューの最大化

林:LINEを単なるメディアではなく、アクティブなお客様との接点だと捉え直せば、提供するサービスにも広がりが出てくると思いますね。実際車検の入庫予約をするオペレーションをすべてLINEで完結することができれば、接客員もお客様もかなりの負荷が軽減できると思います。

このように明確に「便利」な機能であるので、例えば店鋪スタッフがお客様にLINEをご案内する際も、「こんなに便利な機能があるのでぜひLINEを登録してください」と勧めやすいということもあると思います。この辺りも効果実感を早期に感じることができるからこそ起こりうる自発的な行動ですよね。

渡邊:このサービスのメリットを整理すると、(入庫予約をLINEで行うことで)これまで起こっていた電話の行き違いを無くすことができます。チャットで連絡することでお客様とスタッフの皆様とのやりとりの履歴が残るため、双方の「言った/言わない」を無くします。これによって、認識の齟齬や荷電のタイミングのせいで機会損失する、といった課題を解決することができる、というシンプルなものになります。

林:シンプルですが、「目的」にかなった「効果実感」があり「経済合理性」の高いサービスになっていると思いますね。
そして、こうしたシンプルさ、分かりやすさはとても大切なポイントです。
自動車業界において重要な要素として、「5年の販売サイクル」が挙げられます。
新車販売→点検→点検→車検→点検→新車販売・・・というサイクルなのですが、お客様のうち30%はこのサイクルから離脱してしまうというデータがあります。この離脱してしまうユーザーをどう減らすか。その答えがジールスのサービスにあると思って僕はジールスに参画したんです。

渡邊:いわゆる「ライフタイムバリュー」のお話ですね。
確かに店舗や本社視点でも、お客様と自動車販売店のスタッフの皆様が電話のみでやりとりしていると、電話をとれなかったり、音声のみのやりとりでは誰がいつどのようなコミュニケーションをとったのかが不明瞭になってしまいがち、という話を以前お聞きしたことがあります。

林:はい。これはDXに取り組む各社様がもっとも重視しているポイントのひとつで、販促業務や接客業務のデジタル化によって、「顧客接点を増やす」「商品接点を増やす」「コミュニケーションの質を改善する」ということをゴールに定めている場合がほとんどなのではないでしょうか。
そのゴールに最短距離で向かうためにLINEを活用するというジールスの取り組みは画期的だと思います。

渡邊:デジタルビジネスの世界には「トラフィック・イズ・キング」という言葉があります。どんなに良いサービスや良いコンテンツを作ってもトラフィック(=ここではアクティブなユーザー数)を生み出せなければ意味がない。
企業アプリなどがなかなか成功しづらいのも、こうしたところが要因にあると思います。すなわち多機能で必要なものは全て揃っているけれども使われない、というような現象は、この「トラフィック・イズ・キング」の発想を持ち得ない時に起こるものだと思います。毎日、毎時間使われないようなサービスはいずれスマートフォンの2ページ目、3ページ目に追いやられてしまい、いずれ全く使われなくなってしまうのです。
逆に言えば、トラフィックさえ獲得できれば、様々なことが可能になる、という考えです。その視点からもアクティブなLINEをうまく活用することは非常に理にかなってします。そしてそのためにも、取り組みのシンプルさは重要なことだと思うのです。

2022年は自動車DX「元年」

渡邊:こうした思想からこの1年、主に自動車販売店様を中心にDXの最初の一歩として「LINE入庫予約ソリューション」を提供させて頂きました。そして多くの実績を残す事ができ、本当にありがたいことにご好評の声も多数頂くことができています。
そしてその中で感じたことは、小難しい概念や戦略論ではなく、今目の前にある課題を発展性のある形で解決したい、という切実なニーズがあることだったんです。こうした現実に、今後も我々は目を背けずにやっていきたいと思います。

林:自動車販売の現場は論理だけでも、感情だけでもない、本当に総合格闘技のような世界です。今までその総合格闘技を店鋪、電話、メールなどの手段で行ってきた。そこにLINEというツールを追加することでこれほどまでの広がりを見ることができる。
我々のサービスはまだまだですが、とても可能性を感じることができた一年でもありましたね。

渡邊:僕は普段あまりこういったことは言わないのですが(笑)、ここはあえて、2022年は「自動車DX元年」と称して頑張っていきたいと思います。

林:アナログだけでもない、デジタルだけになるだけでもない、with デジタルの発想でのDX(デジタルトランスフォーメーション)。関わる全ての人に優しいデジタル、DXという考え方はとても重要だと思いますし、そうした手応えを得た2021年。2022年はこの思想で多くの販売社様に価値を感じていただきたいですね。そうした意味でも、2022年は元年ですね(笑)

渡邊:2022年は入庫予約を皮切りに、試乗予約や来場予約、見積や査定、ビデオ接客などさまざまな可能性も模索していきたいと考えています。ぜひ一緒に手を取り合って、2022年自動車業界のDXを共に進めていきましょう!

◆渡邊 大介(写真右):執行役員 兼 自動車事業部統括責任者
2006年に株式会社サイバーエージェントに入社。デジタルマーケティング黎明期より大手ナショナルクライアントのデジタル戦略立案に従事。その後、複数のデジタルサービスの起ち上げ、人事責任者として「採用活動のDX」などを歴任した後に、B2B SaaSを展開するリクルートとのジョイント・ベンチャー「ヒューマンキャピタルテクノロジー」社を設立、取締役に就任。2020年11月よりジールスに参画。

◆林 勝敏(写真左):自動車事業部戦略室 室長
大学卒業後、ダイハツ工業株式会社に入社。国内外の自動車販売や宣伝部、イベント企画、海外事業のマーケティング、経営企画などさまざまな業務に従事。海外駐在時は、現地のパートナー企業と合同で海外展開の戦略策定も行い、33年間一貫して自動車業界に携わる。2021年9月より、ジールスに参画。